DANCING SHOES

最近のアルバムってさ、3年周期だったのに1年早く出たの、普通に嬉しかったよね。完全に嬉しい誤算。

わかる!しかもちょうどコロナ流行り始めた頃でさ。自粛中、家でずーっと流してた記憶ある。あの空気感と妙に合ってた。

でもさ、「重力と呼吸」のツアーで桜井さんが「あと少なくとも10曲は書きたい」って言ってたじゃん?

それでこのアルバム、ちょうど10曲だったから、え…もしかして…って一瞬不安にならなかった?

なったなった。しかもトレーラーで「このアルバムで最後にしたい」「これ以上できる気がしない」みたいなこと言うからさ、心臓に悪いよね。ドキッてした。

そんな気持ちで聴く1曲目が「DANCING SHOES」なの、攻めすぎじゃない?
始まりから不穏で、静かに獲物狙ってる感じ。冷静だけど残酷、みたいな。

うん、1曲目から全然優しくない(笑)
でもサビはさ、もう無条件に気持ちいい。とにかくかっこいい。

世の中を舐めてるっていうより、上から俯瞰してちょっと冷笑してる感じだよね。
でも芯はブレてない、大人の余裕みたいな。

しかもさ、ミスチルで珍しく一人称が「俺」なのが良い。
色気あるし、ちょっとテキトーそうで、そのバランスが最高。

手足に枷があっても無様に踊ればいいってさ、無骨なのにおしゃれ。
クールだけど必死、みたいな感じが刺さる。

これ、「重力と呼吸」の頃にはもうデモあったらしいね。
確かにあっちに入ってても全然違和感ない。世界観がちゃんと繋がってる。

不安も期待も全部ひっくるめて、このアルバムの始まりとして完璧な1曲だと思う。
Brand new planet

「Brand new planet」さ、2曲目なのに強すぎない?
もうここでクライマックス来たんだけど、ってなる(笑)

ほんとそれ。最初からスケール大きくて、宇宙に放り出された感じするよね。
でも不安より「行けるかも」って気持ちになるのがすごい。

タイトルも好き。
planet(星)と「欲しい」をかけてるの、最初気づいたときちょっと感動した。

「可能星」とか言い方もかわいいし、
キラキラしてるけど、ちゃんと意味あるファンタジーだよね。

新しい「欲しい」って表現もいい。
物が欲しいとかじゃなくて、次に目指したい自分とか、進みたい場所みたいな。

しかもさ、「いつか叶う」じゃなくて「もうすぐ」って言ってくれるのが大きい。
遠い夢じゃなくて、すぐそこだよって。

諦めそうになってた気持ち、見抜かれてる感じするよね。
「今の僕には無理かも」って思ったこと、ちゃんとわかってる上で励ましてくれる。

ずっと順調だった人の歌じゃないのがいい。
迷ったり、立ち止まったりした時間がちゃんとあったって伝わる。

だから「あと一歩だよ」って言われると、信じちゃう。
今までの努力、ちゃんと見てくれてる感じするもん。

背中押されてるのに、無理やりじゃなくて安心感あるよね。
いやほんと、名曲すぎる。
turn over?

3曲目は「turn over? 」だね。
てかさ、「turn over」ってどういう意味なんだろ?

基本的には「ひっくり返す」とか「転換する」「新しい局面に入る」って意味だよ。

なるほどね。
でも、そこに「?」が付いてるのが気になるよね。

うん。「本当に変われるの?」「この関係、次のページに進める?」みたいな迷いとか、問いかけなんじゃないかな。
決意ってほど強くなくて、揺れてる感じ。

それ聞くと、歌詞の内容とめっちゃ合うね。
3分半くらいで短めだし、軽快で明るくてすごく聴きやすい純愛ソングなのに。

そうそう。それにさ、これ歌ってるのが50歳の桜井さんたちって信じられる?
瑞々しさが全然年齢感じさせない。

歌詞もいいところ多いけど、私はやっぱり
「叫びたいくらいだダーリン」が好き。

私もそこ!
「ダーリン」って呼び方、「しるし」と同じでちょっとドキッとするよね。

でもこの二人、ただ幸せなだけじゃなくて、
「すれ違いの日々」ってちゃんと描かれてるのがリアル。

理想通りにいってないし、順調でもない。
それをどうにかしたくて悩んで、一生懸命考えてる感じする

それでもさ、結局「めちゃくちゃ大好き」って気持ちが全部から溢れてるんだよね。

うん。だからたぶんだけど、この二人うまくいく気がする。
迷ってても、ちゃんと前を向こうとしてる未来が見える。
君と重ねたモノローグ

4曲目、「君と重ねたモノローグ」ね。
てかさ、モノローグって改めてどういう意味だっけ?

モノローグは「独り言」とか「心の中の語り」だね。誰かに向けて話してるけど、実際は自分の内面の声みたいな。

なるほど。
じゃあ「君と重ねたモノローグ」ってことは、その独り言を君と重ねてきたってことか。

うん。心の中の言葉や時間を、ずっと君と共有してきた、みたいなニュアンスだと思う。

曲自体もさ、音がすごく優しくて、声も心地よくて。
なんかリラックスできるよね。ヒーリングミュージック感ある。

わかる。深呼吸したくなる感じ。
で、「果てしなく続く時間」って歌詞、あれ人の人生よりずっと大きい、地球とか宇宙レベルの時間のことだよね。

そうそう。だから「ほんの一瞬 たった一瞬 すれ違っただけ」って表現がさ、そんな壮大な尺度で見ると、確かに出会いなんて一瞬なんだけど…

それをちゃんとわかった上で、
「それでも君は僕の永遠」って言い切るの、もう…さすがすぎる。

うん、時間の大きさを理解した上で選び取る「永遠」だから重みが違うよね。

あとこの曲、アウトロ長すぎない?
ちょっと類を見ない長さ。体感3分くらいあるよね。

あるある。
あの時間で、君と僕の出会いから今までとか、この先の未来とか、勝手にいろいろ想像しちゃう。

一回音がだんだん小さくなって、「あ、終わる?」って思わせてから、
最後にもう一回ふわっと盛り上がるのも好き。

前の「turn over?」はイントロなくて、
前置きいいからとにかく気持ち伝えたい!って感じだったじゃん?

それに比べてこの曲は、アウトロが長くて、余裕とか落ち着きがすごく強調されてるよね。
同じラブソングでも、時間の流れが全然違う。

2曲続けて聴くと、恋のフェーズがちゃんと進んでる感じする。
losstime

5曲目は「losstime」だね。
さっきのアウトロめちゃくちゃ長かった曲のあとに、2分半って急に短いの来たなって思った。

わかる。この緩急すごいよね。
ところでさ、「losstime」って意味、確認だけど知ってる?

あ、たしかに。なんとなくで聴いてた。

もともとはサッカーとかで使う「ロスタイム」だね。試合の最後に付け足される時間。
人生で言うと、「本編が終わったあとの時間」みたいなニュアンスかな。

それ聞くと、この曲の主人公が一気に見えてくるね。
旦那さんを亡くして、子どもも自立してて…社会的な役割は一段落して、「今は人生のロスタイム」って感じなのかも。

歌詞ちょっと不穏だよね。
死をすごく近くに感じてる感じするし、ミスチルで女性目線なのも珍しい。

うん。
家でひとり、家族写真を見ながら夫とか子どものこと思い出してる描写、すごく静かで寂しい。

でもさ、不思議なのが、全然「生きる気力を失ってる」感じじゃないんだよね。
死にたいとか、消えたいとか、そういう暗さじゃない。

むしろ逆だよね。
「いずれみんな逝くんだから、私は今を生きたいように生きる」っていう覚悟を感じる。

「行きたい」と「逝きたい」を重ねてる感じも、すごく現実的。
死を受け入れてるからこそ、今をちゃんと選ぼうとしてる。

短い曲なのに、人生一周分くらいの重みあるよね。
静かだけど、めちゃくちゃ強い。
Documentary film

6曲目の「Documentary film」、紅白でもやってたよね。
あのときは「いい曲だな」くらいだったけど、アルバム通して聴くと重さ違う。

うん。ちょうど真ん中に置かれてるのもあって、
このアルバムの“芯”みたいな曲に感じる。

はっきり言葉にしてないのに、
時間とか終わりとか、そういうものがずっと背景に流れてる感じするよね。

桜井さんの歌い方も、感情を押しつけてこないのが逆に怖い。
静かに見つめてるだけ、みたいな。

ドキュメンタリーフィルムをひとり撮ってるって表現もさ、
記念に残すっていうより、ただ見逃したくないって気持ちに近い気がする。

誰かに見せるためじゃなくて、
君と過ごす何気ない時間を、心の中でそっと保存してる感じだよね。

「笑ってるのに、泣きそうに見える」っていう描写も印象的。
今この瞬間が大切だからこそ、胸の奥がざわつく、みたいな。

何が起きるとか、いつ別れるとか、そういう説明は一切ないのに、
長くは続かないってことだけは、なぜか伝わってくる。

理由はわからないけど、避けられない何かがあるって前提で、
それでも一緒にいる時間を見つめてる感じ。

悲しい曲っていうより、
幸せと同じ場所に、ずっと切なさが置いてある曲だよね。

「himawari」とか「永遠」と近い空気あるの、わかる。
守りたい気持ちと、手放す未来を同時に抱えてる感じ。
Birthday

7曲目は「Birthday」だね。
ここまでちょっと「終わり」とか「時間」とか重たい曲が続いてたから、これ来た瞬間、空気が一気に変わる。

うん、じめっとした感じを一気に吹き飛ばしてくれる。
聴いてるだけで気分上がるし、呼吸しやすくなる(笑)

ドラえもんの映画主題歌って聞くと、あ〜ってなるよね。
明るくて前向きで、誰にでも届く感じ。

桜井さんが「これは座って歌えない曲」って言ってたのも納得。
これ流れたら立ち上がっちゃうもん。

普通の誕生日って、生まれた日を祝う年に一回のイベントだけど、

この曲で言ってる「Birthday」はそうじゃないんだよね。
「変わりたい」って決めた日が誕生日。

新しい自分に生まれ変わろうって覚悟した日なら、
いつでも誕生日にしていいって発想がいい。

カレンダー関係ないし、年齢も関係ない。
今日からでもいいって言われてる感じする。

ろうそくの例えも好き。年の数だけ火を灯すんじゃなくて、心の中に小さな炎をいくつでも灯していい。

それを自分のペースで増やしていけばいいって。
励まされるというより、「行けるぞ」って背中叩かれてる感じ。

ほんと名曲。
この曲来ると、また一歩踏み出してみようかなって思える。
others

8曲目は「others」。
私ね、このアルバムの中で一番好きかも。Birthdayみたいにみんなで盛り上がる曲じゃないけど、なんか強烈に残る。

わかる。派手じゃないのに、独特のインパクトあるよね。
ところでさ、曲名の「others」ってどういう意味なんだろ?

「other」の複数形で、「他の人たち」「当事者じゃない人」みたいな意味だね。

じゃあ「他人同士」とか、「本来は交わらないはずの人たち」ってニュアンスか。

曲の内容考えると、テーマはちょっと危うい愛だよね。
はっきり言わないけど、彼氏がいる彼女の家にいる“僕”の話っぽい。

うん、正しくないってことはわかってる感じする。
でも感情を断ち切れない、曖昧な時間。

キスの描写もさ、今までのミスチルと全然違うよね。
直接的じゃなくて、すごくしゃれてて、文学的。

聴いてて「大人だな…」って思わず唸った。
感情を説明しないのに、空気だけで伝えてくる。

お酒のCMソングっていうのも納得。
酔ってるみたいな、判断力が少し鈍ってる感じある。

しかもこの曲、
「彼女を手に入れたい」とか「好きだ」って全然言わないんだよね。

そこが普通のラブソングと全然違う。
流れに身を任せてて、自分の気持ちもまだ整理できてない感じ。

地に足ついてないというか、浮いてる感覚。
何が正しいか考える前に、時間だけが進んでる。

「窓の外の月を見てる」って歌詞が2回出てくるのも好き。
最初は彼女の部屋の窓、次は帰りのタクシーの窓。

同じ月なのに、状況も気持ちも全然違うのが面白いよね。
距離が一気にできた感じ。

ライブでやったとき、月の映像がすごく綺麗だったの覚えてる。
あれ込みで印象に残ってる。

久しぶりに映像、見返したくなってきた。
The song of praise

9曲目は「The song of praise」ね。
もう今さらだけどさ、このアルバム本当に名曲しかなくない?10曲全部が濃い。

うんうん。
この曲なんて特に、毎日それぞれの人生を歩いてる人みんなに向けた応援ソングって感じ。

朝のニュース番組のテーマソングだったのも納得だよね。
これ聴いてから家出てた人、絶対多いと思う。

「ここにある景色を讃えて」って歌詞、すごくわかりやすくて好き。
このアルバムを象徴するフレーズだと思う。

よくある応援歌ってさ、
「もっと挑戦しよう」「新しい場所へ行こう」って背中押してくるけど、

この曲はまず「今いる場所を大事にしよう」って言ってくれるよね。
無理に環境変えなくてもいいっていう優しさ。

目指してた場所と違ってても、
ここまで来た自分は間違ってないって認めてくれる感じ。

「Any」と似たテーマだけど、
この曲はもっと柔らかくて、静かに寄り添ってくれる。

やっぱり一番のキーワードは「讃える」だよね。

人と比べたり、上ばっかり見てると疲れるし、きりがないじゃん。
そんなに比べなくていいよ、自分をちゃんと褒めていいよって言われてるみたい。

ライブでさ、「Wow -oh!」ってみんなで叫ぶところ、
本当はSOUNDTRACKSツアーでやるはずだったんだろうな。

コロナで中止になっちゃったの、ほんと残念だったよね。

30周年のライブでは入らなくてちょっと寂しかったけど、「miss you」で初披露されたときは、
やっとこの曲がライブで歌われた!ってめちゃくちゃ嬉しかった。

Cメロで少し早口になるところも好き。
「名もなき詩」っぽくて、気持ちが一気に前に出る感じ。

ほんと、この曲の良さは語り尽くせない。
memories

最後、10曲目は「memories」だよ……。
やだもう、終わらないでほしい。まだ全然このアルバムから出たくない。

わかる(笑)
しかもさ、イントロ流れた瞬間でもう全部持ってかれるよね。

うん。イントロだけで空気変わる。
さっきまで見てた景色を一回全部消して、別の世界に連れてかれる感じ。

歌ってるのは、もう会えない「君」をそれでも待ち続けてる僕の話でしょ。
切ないのに、静かで、感情押しつけてこないのが余計にくる。

サビもさ、たった一回だけなのズルい。
なんかミュージカルっぽいというか、物語のクライマックス感ある。

うん、ミスチルでこの感じ初めてかも。
一瞬だけ光が差すみたいなサビ。

「僕だけが幕を下ろせないストーリー」って歌詞、ほんと強い。
もう終わったってわかってるのに、気持ちだけ置いていかれてる感じ。

終わらせなきゃいけないのはわかってるけど、
自分だけまだそこに立ってる、みたいなね。

アルバム最後の曲って、どうしても期待しちゃうじゃん。
ここまで全部良すぎたから、正直ハードル爆上がりしてた。

でもそれを軽々超えてきたよね。
あ、不安いらなかったわ、ってなった。

愛とか、別れとか、時間とか、
このアルバムでずっと出てきたテーマが、ここに全部集まってる感じ。

終わったのに、ちゃんと余韻だけ残していくのがずるい。

だからまた最初から聴きたくなるんだよね。

